数日前のことです。
東の窓から、白みはじめた空を見やると、
朝焼けに、阿弥陀岳が珊瑚色に染まっていました。
その日、夜半から雨になりました。
「寒いですね。道路がカチカチになりました」
それが、所用先で交わす、師走の頃の挨拶の言葉でした。
今年は、黒い雲が、もくもくとうごめく空を眺め、
「また、雨?」
と、度々思いながら、師走を迎えています。
御まじないのように、僅かに雪を頂いていた八ヶ岳は、
降る雨に、山肌をあらわにして、この時期にはあり得ない、
冠雪のない姿を曝しています。
季節にそぐわない風景に、何故か、心地の悪い感触を感じながら、
今日も、そんな山々を眺めています。
例年、敷地の樹木のなかで、落葉の仕舞いをするのは、カエデです。
纏っていた衣服を落とし、か細い枝々をあらわにしたカエデの周りには、
濡れて、乾かない落ち葉が、山積みになっています。
ついこの間まで、青く広がっていた野芝は、枯れて、
いまは丁子色に染まっています。
そんな芝生の上で、乾いた数枚のカエデの落ち葉だけが、
かすかに吹く風に、元気よく、くるくると躍っていました。
珍しく、まだ冬鳥たちの飛来もなく、どこに隠れているのか、
ソヨゴの赤い実を啄ばむ、ヒヨドリの姿もありません。
そして、迎えた夕暮れ時、
カサカサと、絶え間なく音たてて、あられが降りはじめました。
重々しく曇った空は、日没の間ぎわになれば、
そんな日であっても、幽かにバラいろに染まり、
陽の沈む一日の終りをつげてくれます。
絶えることのない、自然の習いに、
嬉しさを思う、一瞬です。
・・・原村だより 118・・・
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